匿名さん
「家庭料理の話をしないで」という高校生…土井善晴が“一汁一菜”で本当に伝えたい「自愛」のための料理
2024年3月15日から全国6都市にて順次開催する「TBSドキュメンタリー映画祭2024」。そのカルチャーセレクションとして、『映画 情熱大陸 土井善晴』が上映される。一汁一菜を提唱する土井善晴さんに密着し、追加取材を行った映画版ではさらに深く追った。料理が苦手、なにを食べたらいいかわからない、と迷う現代の人たちに、料理の哲学を指南している。
――今はやっぱり、料理する人が減っているのでしょうか。
高校で講演した時、一人の男子生徒から「家庭料理のない家もあるから家庭料理の話なんてしないでください」と言われたことがあります。今は裕福な家庭でも5人にひとり、7人にひとりくらいは、家でごはんがない子がいてます。家族で料理をしない家があるのです。
彼には、「自分で作って自分で食べればいい」と答えました。食べることよりも、「料理をすること」が大事なのです。人間ですから。人間は料理する動物です。料理が人間を人間たらしめる。自然と人間のあいだにあるのが料理です。そこに自然を思い人を思う、情緒が生まれ、人や自然を思いやることができるのです。
――自分のために料理すれば、自分を思いやれる、ということでしょうか。
そう。食べるよりも料理することの方が大事。自炊すれば、自分を大切にすることができます。
一人暮らしをする子どもに親が電話して「ちゃんと食べてるか?」って聞くでしょ。「味噌汁くらいだけど作って食べてるよ」と聞けばうちの子しっかりしてるなって思う。逆に、親が相変わらず手まめに料理していたら子どもは何より安心できるものです。
人間がほかの動物と違うのは、料理すること。あれ食べたい、作ってみようかなっていう欲求があるのは、元気な証拠です。