匿名さん
一方で、親ガチャを否定する考えも問題をはらんでいる。「『家庭環境がどんなに劣悪でも、本人の努力によって人生は覆せるんだ。だから親ガチャは間違っている』という言い方がよく聞かれます。これは実は、いいことを言っているように見えて、過激な自己責任論につながる懸念があります。『今、不遇な状態に置かれている人は努力をしてこなかった。本人の怠慢である。ならば、誰も救いの手を差し伸べる必要はない』となってしまいます」。親ガチャ、「外れ」と言われてしまった親は子どもとどう接すればいいのか 「自己責任論」の強要は間違い
親を自分で選べないことを指し、流行語にもなった「親ガチャ」に正面から向き合う若き哲学者がいる。気鋭の35歳、戸谷洋志氏だ。恵まれない家に生まれてきたのだからどうせ自分の人生は変わらない――。日本社会を、とりわけ現代の若者たちを覆う厭世観を乗り越え、自暴自棄に陥らないためには何が必要なのか。「外れ」と言われてしまった親は子どもとどう接すればいいのか。考えるためのヒントや前を向くためのメッセージを聞いた。
戸谷氏自身、「生まれた環境によって、ある程度の人生の要素が決まってしまうことは事実です。それは仕方ないことでもあります」ということを前提に考えているという。しかし、ここで道を踏み外してはならない。「自分の人生を自分で引き受けられないとどうなるか。『うまくいかないのは自分のせいではない。他人のせいだ。親が悪い、国が悪い』と他人に責任転嫁するようになって、エスカレートしていき、自暴自棄型の犯罪につながる危険性があります。
また、『自分のことはどうなっても構わない』となってしまうと、自傷行為や自ら命を絶ってしまうという悪い作用が出てきてしまいます。これをなんとかしたいんです」と強調する。
もし、子どもが『こんな家に生まれてきたくなかった』と人生を悲観するような発言をした場合、厭世観にさいなまれてしまったとき、どうすればいいのか。