匿名さん
おすぎがグループホームという“終の棲家”を得たことでピーコの心は落ち着くかと思われたが、そうはいかなかった。おすぎとピーコ、進行するお互いの認知症のシビアな現実 別々の施設に入り「今生の別れ」
独特な口調で人気を博し、一躍人気者となった2人がテレビから消えて約1年半。その間、彼らはシビアな現実にぶつかり、あまりにも“残酷”な選択を強いられていた。「おすぎです」「ピーコです…
「おすぎさんがいなくなって静まり返る自宅で過ごすうち、ピーコさんはたったひとりの弟を施設に入れてしまったという罪悪感に苛まれるようになりました。ピーコさんは、いつもおすぎさんを気にかける弟思いの兄でした。一方のおすぎさんも兄を慕っていて、“ピーコがいてくれてよかった。
老後は2人で暮らしたい”と常々口にしていたんです。その言葉を聞いていたのに、同居中はストレスからイライラしっぱなしで、大切な弟を突き放すようなことをしてしまった。“やはり施設に入れるべきではなかったのか”“じゃあ、どうすればよかったのか”という答えの見えない問いにピーコさんは苦しんでいました」
(中略)
一方で、生活は荒んでいった。自宅にはゴミがたまり、身の回りのことができなくなっていたピーコ。周囲がその生活を心配し始めた矢先、事件は起きた。今年の3月25日、買い物に訪れた店で万引き(窃盗罪)で逮捕されたのだ。(略)
逮捕後、行政の担当者が代理人弁護士とピーコの処遇を話し合った。そこで決まったのが、「施設に入る」という方針だ。
「両親と2人の姉を先に亡くし、弟も施設に入っているピーコさんには身寄りがなく頼れる人もいません。施設入所の話を聞くなかで、ピーコさんは思い出したように“弟とは違うところで”というニュアンスの言葉を繰り返したそうです。
おすぎさんに会いたい気持ちはあったでしょうが、相当な覚悟を持って彼を施設に入れたわけですから、再びの同居には抵抗があったのかもしれません。それに顔を合わせるうちに、またいがみ合う生活に戻っても困る。ピーコさんなりにおすぎさんのことを思い、悩んで出した結論だったのでしょう」(前出・ピーコの知人)
認知症の進行とともに、ピーコはおすぎを、おすぎはピーコを忘れてしまうかもしれない。別々の施設への入居は「今生の別れ」にも近い選択になる。今年8月、2人がわずか3か月だけ暮らした横浜市内のマンションはひっそりと売却され、兄弟が帰る場所もなくなった──。
冒頭のグループホーム。テレビを見ながら腕や指を動かすレクリエーションを終えたおすぎは、おやつのお菓子をほおばると、幸せそうに微笑む。健康的で穏やかな昼下がりを過ごしていた。